学院長からの挨拶
今日、様々な懸案に直面する世界情勢のなかにあって、とりわけ食料に関わる種々の課題は重要度を増している。食資源の確保はもちろんのこと、流通と貿易、食の安全、食品の廃棄、環境との調和、水資源管理や水質保全、砂漠化等の土地劣化の抑制、公衆衛生の確保、地域振興、等々の問題が山積している。世界各地において貧困や飢餓といった問題も解決をみない。加えて、新型コロナウイルス禍、そしてロシアによるウクライナ侵攻は、我々の日常生活までへも強いインパクトを与えている。これらの問題は、これまで私たちが当たり前ととらえていた教育、働き方、医療、食料の生産、管理や流通などのシステムに対してのパラダイムシフトを余儀なくしている。
世界的な食・水・土資源にまつわる諸問題の解決には、密接に関連した地域の課題解決抜きには達成出来ない。そのためには、地域の課題を世界の中に位置づけて俯瞰的にとらえ、解決のために行動すること(to think globally, act locally)が出来る「グローカル (glocal)」なリーダーが育たねばならない。2017 年 4 月に修士課程、2019年4月に博士課程がスタートした国際食資源学院の目標は、世界の食・水・土資源の重要課題にフロンティア精神を持って向き合うことのできる未来の国際的リーダーを育成することにある。そのため、本学院における学修では、文理融合的な多方面にわたる幅広い視野と深い知識、様々な経験を得る機会を提供する。幅広い分野の世界の第一線で活躍する研究者による講義・演習や、本学院を特徴付けるワンダーフォーゲル型学習を含むカリキュラムにより、卓越したジェネラリスト的素養と、多面的多元的に解決策を提案できるスペシャリスト的素養の双方を具備する人材を養成する。学生諸君には本学キャンパスでの勉学と研究のみならず、研究室を飛び出して国内外の各地の現場で見聞きし体験して、自らの研究を深めていくことを期待する。
世界の諸問題に取り組んでいこうという強い意欲と大志をもつ学生諸君を歓迎したい。
2023年4月1日
北海道大学大学院国際食資源学院長
教授 曾根 輝雄